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「歩くんって一人暮らしだったの?」
透子はベットにちょこんと座りながら言った。
あれからというもの、透子はこの家を安全地帯にするために結界を張る、と言いだして家中を練り歩いた。
一階と二階を隅から隅まで歩き、俺にはわからない何かを施していた。
挙句には家から出て敷地の縁取りに沿って歩いて、そこにも何かをしていた。
透子いわく、これが結界を張るのに必要なことだという。
敷地、そして建物に隙なく結界の基点を置かないと正しく作用しないのだとか。
透子が設置した結界は、外部からの魔力探知を妨害し、外敵の侵入を防ぐものだとか。
俺には結界を張っていようが張っていまいが違いが全くわからないんだが。
家中を練り歩いた透子はこの家に俺以外の人の気配を感じず、尋ねてきたのだった。
「そうだよ。
父さんは俺が小学校を卒業する前に死んじまった。母さんは元々バリバリのキャリアウーマンで、今は海外に行ってここ2.3年は帰ってきてないな。
姉さんもいるんだけど、まぁ母さんの血を見事に受け継いでるのか、じっとしてられない人でね……大学入学を機に家を出て行っちまった。」
「あらあらまぁまぁ。」
透子は目をまん丸にして言った。
まぁ他人が聞いたら驚くだろうな。
高校生が一軒家に一人暮らししているなんて中々普通じゃない。
「母さんは基本的に家に帰ってくる人じゃなかったから、昔から家事は俺がやっててね。一人暮らしもあんまり不自由がないんだよ。」
「とは言ってもこんな広い家で一人暮らしなんて淋しいでしょう?」
「もう慣れたからなぁ。特別そうとは思ってなかったけど、まぁ確かに言われてみれば寂しかったかもな。」
こうして家で誰かと話していると、思えば俺は毎日寂しかったんだなとふと感じた。
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