1226人が本棚に入れています
本棚に追加
一糸まとわぬ女の子が、生まれたままの姿の女の子が、全裸の女の子が道に倒れていた。
強い雨で冷たくなったコンクリートの上に仰向けの状態で倒れていた。
闇のように濃い黒髪は常識を凌駕する程に長く、それは彼女の身長の倍ほどもあるだろう。
だから女の子の裸体の見えてはいけない場所は、辛うじてあらわにはなっていなかった。
けれどそんな黒髪を嘲笑うかのように女の子の肌は白く透き通っており、黒髪の隠されてもなお、その見目麗しい裸体は造形の美しさを際立たせていた。
雨に打たれる全裸の少女。
その光景はあまりにも非現実的で、そしてとても神秘的だった。
その光景を理解できないながらに、見惚れてしまう。
それはあまりにも美しかった。
状況の理解なんかよりも、何かせねばという思考よりも、美術館で感動的な作品に圧倒させるがの如くただただ俺は彼女を見続けてしまった。
「ん……」
俺の意識を現実に引き戻したのは女の子の微かな呻き声だった。
その声を聞いてやっと彼女を助けてやらなければという思考が芽生えた。
この奥まった路地は人通りが少ないし、それに雨は強い。そもそも見つけた自分が助けないのは人としてどうなのか。
ただ状況が状況だ。
全裸で道に横たわる女の子というのはあまりにも現実からかけ離れすぎている。
関わっていいものか。
「────」
女の子の唇から声にならない声が溢れる。
考えている場合ではない。
男として女の子は助けるべきだ。
声は無意識か、女の子は目を開かないしほぼ動きもしない。
俺は傘を捨てて女の子に歩み寄った。
「あっつ……!」
抱き上げようとして女の子に触れた瞬間、思わず手を引いてしまった。
女の子の身体は驚く程に熱かった。
この雨の中長時間倒れていたのなら仕方がないけれど、それにしても……
風邪をひいているのなら尚更まずい。
俺はそっと女の子を抱き上げ、急いで家に駆け込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!