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家の目の前で倒れていた女の子を家に連れる。
抱き上げて運ぶ際に女の子の異常に長い髪を濡れ道に引きずることになってしまったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
これじゃ学校になんて行ってられないな、なんて場違いなことを考えつつ、俺は一人暮らしの家に戻り、取り敢えず洗面所に連れて行く。
風邪をひいているんだし、先ずは濡れた身体を拭いてあげた。
意識のない見知らぬ女の子の身体を触るのはモラルに反する思ったが、まぁ仕方がないだろう。
濡れたままになんかしておけないんだから。
一軒家に一人暮らしという贅沢な暮らしているから空き部屋は沢山ある。
そのうちの一つのベットがある部屋に寝かせ、大学入学を機に家を出た姉が置いていった寝間着を引っ張りだしてきて着せた。
モラルと下心との激しき闘争はもちろんのことだ。
取り敢えず温かくしてベットに寝かせて俺はやっと息をつけた。
女の子は目覚める気配を見せないし、どうしたものか。
熱は結構高そうだし救急車を呼んだ方が良いのだろうか。
いや、10月のこの寒くなり始めた時季に全裸で道端に倒れているのはあまりにも訳ありすぎではないだうか。
ここは敢えて救急車は呼ばないほうがいいのか……
そんなことを考えている時だった。
「────ここは……」
女の子が目覚めたらしく、か細い声を上げた。
「気が付いたか。よかった。」
「……」
女の子は静かに俺を見上げて、その瞳は状況を飲み込めていないかのように揺れていた。
俺が取り敢えず名乗ろうかと口を開こうとした時、女の子は急に勢い良く飛び起きた。
それは高熱を出した病人が出来るような動きではなかったし、出来たとしてもやっていいとは思えない。
「バ、バカっ……動いちゃダメだ!あんな高熱で────」
そう言って寝かそうと彼女の肩に触れたが、しかし先ほどのような熱は全く感じられなかった。
それどころか人として少し心配になるくらいにその身体は冷たかった。
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