第一章 神宮透子のラプソディ

5/51
前へ
/563ページ
次へ
「……!」 不意打ちに思わず言葉を失う。 別にそれが理由な訳ではないが、だがしかし好きな子がいることは事実な訳で。 それを見抜いたような発言に、俺は返答に詰まってしまった。 それを図星ととったのか、女の子はからかうようにニヤリとした。 「男の子ね。 ────まぁいいわ。じゃあお礼は別の形にしましょう。」 「そうしてくれると助かるよ。」 ため息を着きながらベットから降りて俺は言った。 「てかそれよりも、お礼なんかよりも君が何者で何があったのかを教えてくれ。」 そっちの方が大分重要だ。 「私の名前は神宮 透子(かんのみや とうこ)。何があったのかは……説明すると長くなるわね。」 女の子────神宮 透子は意外にもスラスラと答えた。 あまりにも異常な状況だったから説明に渋ると思ったのに。 「俺は当麻歩(とうま あゆむ)だ。まぁ、話せる限りでいいから話してくれ。」 「ええ。わかったわ歩くん。」 「────!」 神宮透子はニッコリと笑うとさも当然に俺の名を呼ぶ。 狼狽える俺を見て楽しそうに微笑むと、神宮透子は話し始めた。 「本来他人に言うことではないけれど、命の恩人だから話すわ。」 曰くこういうことらしい。 神宮透子は魔女である。 ただしそれは生まれつきのものではなく、『魔女ウィルス』なるものに感染した者のことを指すらしい。 『魔女ウィルス』の感染者、すなわち魔女は自らの生命力を魔力に変換し、文字通り魔を操る者となる。 つまり魔法が使えるのだと。 しかし魔女というものは存在してはいけないものとされており、目下魔女狩りに狙われているという。
/563ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1226人が本棚に入れています
本棚に追加