第一章 神宮透子のラプソディ

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「私たち魔女は、自らが魔女であることを隠しながら生きているの。魔法を使わなければただの人間となんら変わりはないし、バレることはない。ただし、一度バレて魔女狩りに目を付けられてしまえば……」 神宮 透子は目を伏せた。 魔女狩り────そいつらも実を言うと魔法を使うものらしい。 魔女との違いは生まれつき魔法が使えるかどうか。 『魔女ウィルス』の感染によって後天的に魔法が使える魔女とは違い、魔女狩りを行う魔法使いたちは血を受け継いで生まれつき使える者たち。 それは同じようで全く違うとか。 「魔法使いつと言うのは大気に有る自然の魔力を利用して、定められた術式を用いた魔法を行使する。 そこには明確な知識と卓越した技術が必要になる。 けれど私たち魔女は自らの生命力を魔力に変換して、術式なんかいらずにイメージだけで思った通りの現象を起こすことが出来るの。簡単なのよ、大分ね。」 つまりは魔法使いのただの嫉妬から始まったのだとか。 代を重ね、歴史と知識を培って魔法を成してきた魔法使いに対し、ウィルスに感染しただけで容易に魔法の使える魔女。 それは魔法使いたちにとって憎悪の対象にしかならなかった。 それがどの位昔から行われてきたのかはわからないが、魔女の殲滅はずっと続いてきた。 「いくら簡単に魔法が使えるとはいえ魔女は突発的に使えるようになっただけのただの素人。 修練して知識と技術を持つ魔法使いたちに敵うべくもなく、虐殺されるのが基本よ。 ────まぁ私くらいになれば逃げ果せることが出来るくらいの魔法は使えるのだけれど。」 神宮 透子はそう言うと、彼女の話に未だ半信半疑な俺に向かって人差し指を突き出してくいっと上にあげた。 「うあっ!」 信じ難いことに俺の体が宙に浮いた。 とても不思議な感覚だった。 俺の体を支えるものは何もなく、吊られている感覚すらない。 無重力とはこんな感覚では、といった感じだ。
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