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「魔女狩りに見つかった魔女はまずその存在を社会的に抹殺される。居なかったことになるのよ、初めから。」
神宮透子は俺を床に座らせながら言った。
「ウィルスの感染が危惧される家族は真っ先に殺される。私は五年前に目の前で家族を殺された。」
「えっ────」
「それはからずっと逃亡生活よ。
魔法があれば生きることには苦労しなかったし、痕跡を残さないように注意していればそう辛いものでもなかったわ。
まぁ基本的に拠点とする場所なんてなかったから放浪生活だったけれどね。」
神宮 透子はこともなげに言った。
しかしその表情はどこか淋しそうだった。
「昨晩はね、魔女狩りに見つかってしまったのよ。
一晩中尾け回してきてどうにも振り切れなかったから透明になったんだけれど、慌てて魔法を使ったからか透明になったのは身体だけで、服は消し飛んじゃったのよね。」
「消し飛んだって、お前……」
透明になったとは言え、それは女の子としていかがなものか。
「取り敢えず透明になったからよしとして逃げていたんだけれどね、途中で力尽きて倒れちゃったわけ。」
そして朝登校しようとした俺に発見されたと。
突拍子も無い話だが、さっき浮かされた事実を考えると魔法とやらを信じるほかはないみたいだ。
「成る程。その話、信じよう。
じゃあ今風邪が治ってるのも魔法のおかげか? 結構な高熱だったけど。」
「そうよ。病気を、特に風邪を治すことは雑作もないわ。
ただ意識がないときに衰弱して力尽きてしまうとどうしようもなかったから、あなたには感謝してるわ。」
神宮透子はベットから降りると俺の目の前に腰を下ろした。
そして俺の頬をその綺麗な手で撫で、妖艶な笑みを浮かべて顔を近づける。
その姿はあまりにも艶めかしく魅力的で、俺は一切の身動きが取れなかった。
もしかして、これも魔法か……!?
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