旅立ち

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乾かすための台の上に土器を移すと ほっと力がぬけて、 遠くにあった広場の音や匂いが ナミの体に流れこんで来る。 どうやら式は終わったらしく 宴会のざわめきに歌声が混じっている。 「あれはキイジイの声だな」 わざと卑猥な言葉を入れて 困らせるのが好きだから 花嫁さんも 顔を赤くさせていることだろうと苦笑する。 するとその時 歌声とは別のところで ジャリとかすかな音が鳴った。 ナミの家のまわりには 川辺の小さな石が敷いてある。 両親とも亡くなったあとで、 一人暮らしは物騒だから 人や動物が近づいた時にすぐ気がつくようにと サギがまいてくれたのだ。 村の者は皆広場に集まっているこんな時間に 一体誰がと 音がした戸口の方に神経を集めると 立ち止まってこちらをうかがう気配がする。 声をかけてこないところをみると 広場に姿を現さないナミを気づかって 来てくれたわけではないらしい。
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