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中学の学園祭でお化け屋敷をやることになったのは、
呉羽弘(くれは ひろむ)が提案したからだった。
弘は学級委員や文化祭実行委員といった役職にはつかないものの、
イベントではいつもみんなの中心に立って動く、
いわば実行部隊の隊長みたいなヤツだった。
弘がいれば上手くいく。
アイツの力強い言葉と笑顔が、クラスをまとめ、引っ張っていった。
そして、文化祭の前夜、
俺たちは学校に残って仕上げの作業に取り掛かっていた。
それは半分本当で、
半分は自分たちだけで前夜祭をしようと盛り上がっていたからだった。
夜十時を越えて、誰かが買い出しに行こうと切り出し、
がやがやと教室を出て行った。
周囲にバレないように黒幕を窓に張って、教室の照明を落とし、
当日使う予定の小さなライトだけを集めて、
教室に残った俺たちは喋っていた。
ちょうどそのとき、宿直の先生が見回りに来た。
きゅっきゅっと、リノリウムの廊下を鳴らして歩いてくる。
一瞬、ざわりとどよめき、
そして、俺たちはそれぞれ、机の陰や壁とカーテンの隙間に姿を隠した。
俺の背後に温かい身体が触れ、思わず声を上げそうになる。
「シッ……静かに」
弘の声だった。
耳元でささやき、俺の口をその手で封じた。
先生が教室の前を通り過ぎるまでの数秒間、
俺は弘の腕の中で身を硬くしていた。
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