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タケちゃんと喧嘩なんて殆どしたことがない。いやないと言っとも過言じゃないくらい。
子供の俺を相手にしていなかったのか、それかタケちゃんが俺に文句言わずに気遣ってくれたからか、その両方なのか。
どれにしろ、初めての喧嘩がここまで険悪なムードになってしまうとは思わなかった。
「どうしたの?」
「あ、喧嘩したの初めてだなあって」
「……珍しいね」
冬也くんは興味深そうにそう言った。
「珍しいって?」
「だって大人になるまで喧嘩したことなかったんでしょ? かなり遅いし珍しいよ。俺なんか颯斗と常日頃喧嘩してるよ」
「え、そんな風には見えない。二人はいつも一緒っていうイメージがあるなあ」
「そんなことないよ。大学では学部が違うから会うのは大抵食堂で昼食するときくらいだよ。遊園地だって一緒に行ったじゃん」
「あれは……」
てっきり俺の為に一人で来てくれたのかと思ったから。元々颯斗くんと行くつもりだっただろうに、俺にチケットをくれて本当に優しい子だ。
「あ、ごめん。俺……気使わなかったね」
「え、ああいいよ。全然気にしてないから」
『遊園地』の話題を出してしまったことに気まずさを覚えたらしく冬也くんは眉を寄せて謝った。更に俺が返答した後に、しまったと言う風に口元に手を抑えた。
余計なことを言ってしまったとでも、思っているのだろうか。あまり気を使われるとこちらが困るのだけど。
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