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○月○日
「この何の変哲もないスプーン。
今からこの、フジゲラーが曲げてみせます」
「おぉぉ」
店の営業時間中。
状況把握のために店内を回っていると、フジコちゃんが客に対してマジックを披露しているところを目撃した。
話す話題がなかったのだろうか。
俺は仕事ついでにフジコちゃんの卓を眺めることにした。
「ではこのスプーンを…」
そう言いながらフジコちゃん改め、フジゲラーがスプーンをエロい指先で上下にこすりはじめた。
なぜかまっすぐと伸びるスプーンが18禁に見える。
「3、2、1……はいっ!」
グニーン(スプーン曲がる)
「おぉお!」
90度に折れまがったスプーンを見て、客からは歓声が上がる。
俺は思わず下半身を抑えた。
そんなに曲げたら痛いよー。
数時間後――。
「フジゲラーちゃん、お疲れ」
「ん。お疲れ」
「今日、仕事で客の前でスプーン曲げてたでしょ。
あれ、どうやったの?」
タネが気になったので聞いてみた。
「あぁ、あれ?
……。
……テレパシー」
ボソっと呟き、去っていくフジゲラー。
「……やっぱり」
最近の俺はフジコちゃんからテレパシーが出ようと、目からビームが出ようと驚かなくなっていた。
むしろ、フジコちゃんなら何でもできそうな気すらする。
慣れって怖い!
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