第1章

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 「宜しいで御座いますかな恋文」  テスト用紙の式神が私の机に引きこもった手紙の式神を説得している。  「貴女には私共には無い女のさしすせその素養があるのですよ。もっと自信をお持ちなさいな」  テストにもそんな事書いた覚えは無いし、手紙にも書いた覚えはないんだけど。式神の元の紙は私が書いたものがその儘個性として反映される。 手紙は私がクラスの芦屋君に渡す筈だったけど恥ずかしくなってビリビリに破いちゃった。シャイなのも私にそっくりだ。 テスト用紙も点数の低さをバレない為に破って式神にしたけれど、元より点数低いから、  「女のさしすせそ、財布は、シャネルで、凄くセンス良いことをそれとなく自慢してみる」  私頭悪いのが露呈してしまう。  「それよりクレープクレープ」  「化粧品化粧品」  レシートの式神がテスト用紙の式神を否定。と言うか、買った物の事しか頭にないから単なる自己主張だけど……。  商店街で買い食いしたの思い切りばらしてるしこいつら。  「二つだけ正解。凄いとセンスだけ当たってる、他は流石、信じられない、せうなんだぁだよバカちん」  手紙の式神が机の中から喚き立てる。  「あんた達何やってんの?」  いい加減何で揉めているのか判らないので式神達に訊ねてみると、  「恋文にそろそろ、芦屋様に愛の告白をば」  詰まりに芦屋君に告白しろと言う事?  「あんた一人が説得…」言い切る前に部屋を見ていると、レシート達は私が買った物に夢中だ。買った店が違うので、ヘッドホンで音楽聞いたり、クレープ頬張ってたり、パタパタ化粧したり、協調性がゼロだし。 テストはテストでお馬鹿な説得を手紙にするし。 証拠隠滅の為に式神にしたのが間違いだったか。  「しょうが無い、私が出すか」  引き出しに手を掛けると、  「駄目。ここから出たく無い」  一丁前に中から引っ張って抵抗して来た。
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