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コンタクトの目が酷く乾いて、それを外し眼鏡をかける。
電話を切ったらしなければいけない事はもう1つしか残されていない。
2つ目の薬剤の蓋を開け、その臭いに顔をしかめ、ふと思った。
……いや違う、そうじゃない。
私がしなければならない事はもう1つある。
明日もし会社に行かなければ。
そう北山 光希は言った。
だから私のしなければならない事はもう1つある。
またあの駅で電車を降りること。
約束した訳じゃあないし、必然でもない。
でも電話を終えた私には、
やり残した課題のように思えた。
京子の推理が正解で、
私の事をああしてわざと忘れていたと彼が言ったのなら、
あの日、あの教師で西日から、私を静かに守ってくれた彼のとりとめのない妄想話を聞くために、
今日は死んではいけないと、
そう言う事だ。
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