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…じょ!じょ!
――――冗談だと?
三島は床に転げそうになるくらい大爆笑している。
俺は今、からかわれたってことか?
それを理解した瞬間、頭が沸騰した。三島に対する怒りが一気にこみ上げてくる。
なんなんだ、このクソガキは!
俺は一瞬ヤクザの情婦(いや、俺は男だけど)にされるんじゃないかと思って、生きた心地がしなかったってのに。
「ハハ……まぁ、クソに目ェつけられたんを悔いるしかなぁな」
三島は自分の腕を枕にするようにしてそのまま床にごろりと床に横になった。
呼び捨ての次は、クソ、か。確かにあんな人間、クソで間違っちゃいない。
あの坪内ってやつ、よっぽど人望がないのか。
それともーーーー。
「お前」
「ん?」
「……お前あいつの仲間だよな?」
俺が尋ねると、三島はまたつまらなそうな表情を浮かべて、大きな欠伸をした。
「……まっとうに行きようとしくさっとる人間に手ェ出そうとするんはクソの中のクソじゃ」
「………………」
「クソはクソ同士でやり合うから面白いんじゃ。バカな一般人から金を巻き上げるより他に楽しいことはごまんとある」
クソ、クソ、と、意味の分からないことを独り言のように呟いた後、三島は居眠りを始めてしまった。
のんきなもんだ。俺たちが逃げたらこいつは坪内に大目玉、いや、それ以上のものを食らうんだろうに。
坪内も、この三島も、同じヤクザであることには変わりはない。
でも二人には、なにか決定的な違いがあるような気がした。
でもそれが何なのかは俺には解らない。
俺たちが助かる鍵は、今、俺の目の前でイビキをかいている男が持っている気がする。
でも、俺にはヤクザ相手にうまいハッタリをかまして逃げる賢さも、勇気もない。
その時、縛られた俺の腕が後ろにぐいっと引っ張られた。
おっさんが目を覚ましたのだ。
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