第四章 「マネー!マネー!マネー!」

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坪内が、短くなったタバコをこちらにぽん、と放り投げた。 たったそれだけのことなのに、俺とおっさんは過剰に反応してしまう。 俺の足元で、タバコがジリジリと燃えている。 「……もし、小鳥遊さんだけで払うことができなかったら、そりゃああんたにも支払いの責任は回ってきますよ。元はといえば、あんたのした借金なんだから」 そう。 そこだけは俺も同意見だ。 すると、坪内はテーブルから降りて俺たちに近づいてきた。 そばにしゃがみ込み、黒沢のおっさんの顔をまじまじと覗き込んでいる。 「……黒沢さん。なぜ、戻ってきたんです?」 「………………!」 「ずっと逃げ回っていたのになぜ、この街へ?」 顔がびたり、とくっつきそうなくらいの距離で坪内が口元を斜めに歪ませる。 凶悪、としか表現しようのない笑顔だ。 「……娘さん、あんまり良くないんですって?」 「……そ!……それは……!」 「最近は病院でもう寝たきり状態になってるそうじゃないですか……」 「……どうして、それを……!」 ふふふ、と坪内は下卑た笑い声を漏らした。 「もし、あなたが借金を払い切れなかったら。あなたの奥さん、娘さん、そのご主人さんの家族から、拝借するしかありませんよね。当然ですが、調べさせて頂きました」 ゾッとした。 一気に手と、足の指先が凍ったように冷たくなった気がした。 これは脅しだ。 明らかな脅迫だ。 借金はする方が悪いと俺は思う。 でも、こんなえげつないやり方をするなんて、人間のやることじゃない。 「……そ、そんなこと、させるか!!私の家族には絶対に近づけさせない……!このっ……クズどもが……!」 黒沢のおっさんは縛られた腕を何度も捩って、坪内に食ってかかろうとした。 威勢のいい文句を吐いたものだが、声は泣きそうに震えている。 途端、坪内の表情が一瞬にして変わったのを俺は見た。 眉が釣り上がり、目がぎらりと光った。口元が歪み、こめかみに青筋が走る。 まるで般若面さながらだ。 坪内は立ち上がり、黒沢のおっさんの腹を勢い良く蹴り上げた。
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