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馬鹿!
馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿!
心の底から、そう言うと思ってたよ、大馬鹿野郎!!
俺は絶望に打ちのめされた。
自分がこれからどんなことになるのか、あのジジイはちっとも、ちっとも、分かっちゃいないんだ。
なんでそんなに、自分から罰を被りにいきたがるんだよ。
「ハハハハハ!それは、それは、美しい友情ですねえ……!」
坪内は大声をあげて笑い、短くなったタバコを床に放り投げた。先生がそれを目で置い、目を眇めている。
「拾いなさい」
「?」
「タバコを、拾いなさい」
心臓が痛くなるほど驚いたのは、俺だ。
先生床でちりちりと燃えているタバコを指差し、坪内にそう言い放った、
なんで自分から煽るようなこと言うんだよ、こんな時に!
坪内は唇の端を斜めに吊り上げ、先生に顔を近づけた。
怒りの頂点の一本手前、という表情。坪内は靴下を履いた足で、燃えているタバコを踏み潰した。
「あんた、自分がどういう状況に居るのか分かってねぇのか?なぁ?」
「それとこれとは話が別です。……あと、優作さんとチー……黒沢の拘束を解きなさい。今すぐに」
先生が言葉を言い終わる前に、坪内の拳が振り上げられた。
殴られるーーーー
俺は反射的に目を閉じてしまい、ゴッ、という鈍い音だけが耳に届いた。
ああ、どうしよう、先生が殴られた……!あの細い身体があんな奴の拳を受けたら、どうなっちまうんだ。
目を開けたくない、見たくない。
俺はそう思いながら恐る恐る目を開けた。
しかし、先生は坪内の鉄拳を受け、床に倒れているのではないかと思いきや、しゃん、と立ったままだった。
しかし殴られた頬はすぐに赤く腫れ上がり、唇の端には血が滲んでいるのが見える。
「せっ、先生……!」
先生は痛そうな顔すら浮かべていない。ただ、先程と変わらずじっと坪内を見据えている。
俺の声すら、聞こえていないように。
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