第四章 「マネー!マネー!マネー!」

27/45

880人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
馬鹿! 馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿! 心の底から、そう言うと思ってたよ、大馬鹿野郎!! 俺は絶望に打ちのめされた。 自分がこれからどんなことになるのか、あのジジイはちっとも、ちっとも、分かっちゃいないんだ。 なんでそんなに、自分から罰を被りにいきたがるんだよ。 「ハハハハハ!それは、それは、美しい友情ですねえ……!」 坪内は大声をあげて笑い、短くなったタバコを床に放り投げた。先生がそれを目で置い、目を眇めている。 「拾いなさい」 「?」 「タバコを、拾いなさい」 心臓が痛くなるほど驚いたのは、俺だ。 先生床でちりちりと燃えているタバコを指差し、坪内にそう言い放った、 なんで自分から煽るようなこと言うんだよ、こんな時に! 坪内は唇の端を斜めに吊り上げ、先生に顔を近づけた。 怒りの頂点の一本手前、という表情。坪内は靴下を履いた足で、燃えているタバコを踏み潰した。 「あんた、自分がどういう状況に居るのか分かってねぇのか?なぁ?」 「それとこれとは話が別です。……あと、優作さんとチー……黒沢の拘束を解きなさい。今すぐに」 先生が言葉を言い終わる前に、坪内の拳が振り上げられた。 殴られるーーーー 俺は反射的に目を閉じてしまい、ゴッ、という鈍い音だけが耳に届いた。 ああ、どうしよう、先生が殴られた……!あの細い身体があんな奴の拳を受けたら、どうなっちまうんだ。 目を開けたくない、見たくない。 俺はそう思いながら恐る恐る目を開けた。 しかし、先生は坪内の鉄拳を受け、床に倒れているのではないかと思いきや、しゃん、と立ったままだった。 しかし殴られた頬はすぐに赤く腫れ上がり、唇の端には血が滲んでいるのが見える。 「せっ、先生……!」 先生は痛そうな顔すら浮かべていない。ただ、先程と変わらずじっと坪内を見据えている。 俺の声すら、聞こえていないように。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

880人が本棚に入れています
本棚に追加