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今、先生は何て言った?
100万用意するって言ったよな?
俺の聞き間違いじゃないよな?
そんな金、この家のどこにあるっていうんだよ。少なくとも、先生の通帳の中には入ってない。
それとも、俺の知らない所に隠し金があるのか、もしかして、もしかして、商店街をぐるっと回って金策でもするつもりなのか。
いや、もしくは、ハッタリかーーーー
「それでは、少し待っていてください。持ってきます」
「ああ、早めに頼みますよ、小鳥遊さん」
先生は涼しい顔をして、家のどこかへ行ってしまった。
坪内は先生を全く信じていないという表情。唇の端を吊り上げ、馬鹿にしたような眼差しで先生の後姿を見送っている。
確かに、今ここですぐに100万用意するなんて、信じられる話じゃない。
「…………逃げたのかもしれないな……」
弱々しい声で、黒沢のおっさんがぽつりと呟いた。
「そんなわけねぇだろ!……先生は、そんな人間じゃない」
今、この腕の拘束が外れたら、俺はヤクザ二人よりも先に一番におっさんを殴るだろう。
先生がそんな卑怯なことをするわけがない。
俺はともかく、友達の、黒沢のおっさんを見捨てるようなこと、絶対にだ。
「 100ありゃ、今日の所は取り敢えず十分なんじゃろ、坪内さん」
「ああ。残りはまた後日回収だ。……100ありゃ、俺の面子も少しは立つ。親父の機嫌も取れる。ただ、お前、あのジジイが本当に100用意できると想うか?」
「……どうじゃろ」
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