第四章 「マネー!マネー!マネー!」

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内臓が身体の中で大きく波打ち、俺は吐きそうになる。全身にはびっしょりと汗をかいていた。 先生、と呼びたいのに、顎が震えて過ぎて声が出せない。 ーーーーどうしよう。 このまま、先生は殺される。 目の前で、頭を撃たれて、きっと血をたくさん流して、倒れて、もう二度と起き上がれなくなる。 目を開かなくなる。 声を出せなくなる。 俺はまるで首を締められているように息苦しく、はっ、はっ、と荒い息を繰り返した。 「そうされても仕方ねえことをてめえはやったんだ。ここでのたれ死にやがれ、ジジイ!!」 「……っ!!ちょ、ちょっと、待ってくれ!!」 坪内が銃口で先生のこめかみを抉った瞬間、俺は全身の力を振り絞るようにして声を上げた。 それはまるで、自分の声じゃないみたいに、掠れていた。 その場に居る全員の視線が俺の方に向く。 俺の心臓は、もう今日何度目かわからないくらいの大振動を繰り返している。 「……み、三島!さっき、俺に言ったろ!」 「……おん?」 「お前が言ったこと、何でもする!それ以外でも、何でも、俺が何でもするから……!ジジイより俺の方が金になることがあるんだろ!話をつけてくれ!頼む!先生を殺さないでくれ……!」 頭で何かを考えて言ってるわけじゃない、無意識にその言葉が口をついて出ていた。 俺はこんな人間じゃないのに、一体どうしてしまったんだろう。 自分自身でも分からない。 「……お願いだから……殺さないでくれ……頼むよぉ……」 それでも、 先生が目の前で殺される所なんて見たくない。 見るくらいなら、死んだ方がマシだ。だって俺が今ここに居るのは、生きているのは、あの人のお陰なんだから。 熱くなった両目から溢れた涙がバタバタと床に落ちていく。視界は揺らぎ、もう先生の顔すら見えない。 「……三島、何の話だ……?」 「ああ……えーと……」 すると、バラバラバラと何かが落ちる音がした。 何かと思って顔を上げると、先生が箱を持ち上げて、その中身をテーブルにぶちまけていたのだ。 「ヤクザ屋さんなら、興の一つも、理解はして下さると思ったんですが」 先生は、あの顔になっていた。 俺が首吊り自殺をしようとした時、スリーカウントをした、あの時の顔に。 「……何言ってやがる?てめえ」 「今から、僕がここにある新聞紙を全て万札に変えてみせます」 image=488268060.jpg
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