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「……夕飯……その、腹が、減ってると、思って……」
声が情けなく、段々小さくなってしまう。
これじゃ先生に何て言ってるか伝わらない。何で俺は一人でこんなにビビッているんだろう。
「……あの、ちゃんと、俺、出て行きますから。確かに、怖い思いすんのやだし、先生がその方がいいってんなら、明日にでも……その……」
どうして、先生は返事をしてくれないんだ。俺の声は聞こえている筈なのに。
「……でも、その、俺、ほんと……馬鹿だから、先生が何で怒ってんのか、分かんなくて……」
どうしてそれがこんなに不安なんだろう。目頭がきゅっと、きつく締め付けられるんだろう。
「……俺、自分なりに、頑張ったつもりで……」
本当は、想像してた。
「……先生を助けたくて……」
先生が、あの掌で、いつもみたいに俺の頭を撫でてくれるのを、待ってた。
優作さん、
怖かったでしょう、
よく頑張りましたね、
よく我慢しましたねって。
あの、とろんとした、とろけそうな笑顔で。
「……ただ、ほんと、それだけで……」
褒めてくれると思ってたのに。
なんでこんなことになっちまったんだろう。
「き、嫌いに」
俺はさっきから、
「……お、俺のこと、嫌いにならないでください…………」
こんなに必死になって、何を言ってるんだろう?
嫌いにならないでくださいって、何だよ、それは。
それは、つまり、俺が、まるで。
好かれたい、
みたいな、
そんな。
すると、いきなり目の前に大きな黒い影ができた。
閉ざされていた障子がゆっくりと開き、そこには先生が立っていた。
もうあの似合わないスーツは脱いでいて、いつものスタイルに戻っている。
俺は何だか居心地悪くて、視線を皿にのっているおにぎりに向けた。
すると俺は、いきなり先生に二の腕を掴まれた。
続けて、ぐい、と強い力で引き寄せられる。
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