第四章 「マネー!マネー!マネー!」

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俺が顔を上げるより先に、俺は先生の腕の中に居た。 細い両の腕が、俺をすっぽりと包んでいる。その力が思いの外力強くて、驚いた。 驚きすぎて、俺は両手で持っていた皿を落っことしてしまった。 床に皿が叩きつけられるガアン、という大きな音が響いた瞬間、先生の腕が俺から離れていった。 「わ、わっ…………」 大丈夫だ、皿は割れてない。 俺はしゃがみ込んで、床に転がったおにぎりを掴んだ。 今の、 なに、 なにさ、 なんだった? それは本当に一瞬だったのに、肩に、まだ暖かさが残ってる。 先生の掌が触れた感触が。 どっ、どっ、どっ、どっ、 と身体の中心で激しい重低音を響かせているのは、俺の心臓だ。 顔が熱い。茹で上がったみたいに、火照って、たまらなく熱い。多分、耳まで赤くなってる。 すると、先生もしゃがみ込んだ。 俺が手に掴んでいる、さっき床に転がったおにぎりを取り上げて、それをぱくんと一口頬張った。 「あっ、それ、今っ……落ちっ…落ちたやつ……」 「美味しい」 「………………」 「……すごく、美味しいです」 先生は、二口、三口と、おにぎりに噛り付く。ついには全て食べ終えて、指についた米粒まで綺麗に舐め取った。 ほら、やっぱり、腹が減ってたんじゃないか。 俺も皿の上から一つおにぎりを掴み、ぱくんと噛り付いた。 鮭だ。 上手い。塩加減も、握り加減も、絶妙だし、周りに巻いた海苔はまだパリッとしてるし。 食べていたら、いつの間にか心臓の音は穏やかになっていた。 大丈夫だ。 落ち着いて、話せる。 俺は小さく息を吸い込んだ。 「……やっぱり、もう少しだけ」 「………………」 「……ここに居させてくれませんか」 「………………」 「先生が……迷惑じゃないなら……」
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