序章 「ある自殺志願者の口上」

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幸せは、明日やってくるとは限らない。 お父さん、お母さん 俺はもう疲れました 人生に、自分が自分として生きることに疲れました 世の中というものに、疲れてしまったのです 頭も良くはなく、運動神経があるわけでも、 何か秀でた才能があるわけでもない平々凡々な俺に、 (顔だけはちょっぴり良く生んでくれたことには感謝しています) ある日突然「ゲイだ」とカミングアウトされた二人の苦悩を考えると、 なぜ俺はあの時にさっさと死ななかったのだろう、と、 そうすれば二人を二重に苦しめることはなかっただろうに、と、 今更ながら後悔しています 上京したものの 始めた仕事はどれも長続きせず、 フリーター生活を続け、 実家に仕送りもできず、 男たちに振り回され、 本当に本気で好きになった人は最低最悪の男で、 つくしにつくした挙句、捨てられてしまいました (でもこれだけは言わせて下さい。彼はとてもイイ男だったのです。顔だけは) しかしどうか、彼を恨まないでやってください 彼には、俺とは違って、守るべきものがあるのです 俺には最後までなにもありませんでした うれしいも、たのしいも、一握りの幸せさえ ただ、さびしくて、こいしい なにも残すことのできない、親不孝な息子をどうかお許し下さい
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