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まるで形状記憶合金みたいに、ゴムの輪っかが星の形になっている。
俺が先生の手元を覗き込むと、先生は星の形になってしまった輪ゴムを指で摘み上げ、それをひらひらと俺の目の前で振ってみせた。
「ふふ。これはね、"スターゲイザー"っていう手品なんです」
「"スターゲイザー"……?」
「輪ゴムふたつでできる、とってもお手頃なお星様です」
先生は俺の手首を掴み、俺の掌の上にそっとその星型のゴムをのせた。
「ほら、優作さん、お星様がきみの手の中だ」
掌に乗った星は、
天体望遠鏡のレンズから覗いた夜空の星に比べれば、呆れるほどに貧相で。
「……随分安っぽい星ですね」
「ふふふふ。貧乏な僕らにはぴったりです」
たしかに、そうだな。
先生の言う通りだ。
まだまともな職すら見つかっていない俺たちに、ぴったり。
俺はその星をひとさし指に通して、くるくると回すように弄んだ。
「きみに、似ているなと思いました」
「へ?」
「幸樹くんが」
俺の一歩先を歩き始めた先生が、顔を真上に向け、夜空を見上げながら言う。
それは非常に心外な言葉だった。
が、ついさっき、自分でもそう思ってしまったのだから、否定のしようもない。俺はなんだかばつが悪くて、口籠もった。
「それは俺がガキっぽいっていうことを言いたいんですか…」
「いいええ、そういうことではなくて」
一瞬、間が空いて。
「なんだかさびしそうに、見えたんです。はじめて会ったときから」
俺は言葉に詰まった。
さびしそうに見えた?
俺が?
「べつに、俺は」
さびしがって自殺しようとしたわけじゃないです、
と、言おうとしたが、止めた。
先生が、あんまりににこにこと笑いながら空の星を眺めていたからだ。
その邪魔をしたくなかった。
その代わり、
「そんなに反らしたら、すぐに首を痛めるぞ、ジジイめ」
とだけ、胸の中で毒づいておいた。
「……帰ったら、教えて下さい」
「?」
「スターゲイザーの、やり方」
「ええ。いいですよ」
「……幸樹が今度うちに来た時、自慢してやるんで」
「ちょっぴり難しいけれど、大丈夫かなあ」
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