2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は茨
明日には塔の上で糸車の針に指を刺し眠りにつく存在。
茨姫・・・それが私に与えられた運命だ。
「それでも行くわ。どうせ私は明日には眠る。時間は15年、たっぷりあるから大丈夫よ。任せておいて、絶対に白雪を見つけてここへまた戻ってくるから」
笑い慣れた作り笑いの笑顔を見せる。
道化師はそれを見て心底楽しそうにニヤリと笑う。
「その覚悟なら安心だ。では、私からはこの時計を。これを明日塔へ行く時にもって行きなさい。この時計が夢の中で不思議の国へと案内してくれるはずだよ。」
「時計?時計にしてはおかしな時計ね。針はめちゃくちゃに動いているし、版には時間だけじゃなく方角まで書いてあるわよ?」
「行けばわかります。きっと何かの役にたちますから。忘れずに持って行って下さいね。ご健闘をお祈り申し上げます。」
そういうと道化師は後ろへ2歩ほど下がり一礼をして消えていった。本当にわけのわからない存在である。
「スオン、娘を・・・白雪を任せたわ、頑張ってね。必ず、一緒に戻ってきて」
「私からも餞別。この指輪を付けていって。少しだけれど私の魔力が入っているの。何かの役に立つかもしれないわ」
「僕は応援しか出来ないけれど、スオン、頑張って。戻ってしたらまた皆で遊ぼう」
「スオン様、白雪姫様をどうかお願いします。」
それぞれの人達に応援の言葉をもらい、また馬車に乗り込み城へと戻った。どの言葉も胡散臭く、表面的でしかない。そんな事しか考えられない私もだめだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!