*第二話*

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憂鬱な1日が始まった。憂鬱なんて言っても、何か悪い事があるわけではない、ごく普通にいつも通りにしていればいい。それが今日私に与えられた使命だから。 昨日の夜街中の糸車を燃やし終えた。全てシナリオ通り。この世界の理の通りに事が進んでいる。白雪の件があり、運命の日である今日何かまた不吉な事が起こるのでは無いかとみんな内心はドキドキしていることだろう。 もし、塔に魔女が居なかったら、糸車が無かったら・・・。私は眠らなくてすむが、この世界を歪めてしまうかもしれない事になりかねないのである。それでも、もし眠りにつかなくてよくなるのならそれも悪くないのかもしれないな、などと考えている自分が居るのも事実だ。 確かに白雪を助けるとは言った。私は今日、日没に合わせて城の敷地内にある高い塔に登り糸車に指を刺して呪いにかかり深い眠りにつかなくてはならない。結果が見えているのにも関わらず、指を刺すことはしなくてはいけない事柄だ。できることならその様な事はやりたくなどない。 私だって14歳。まだまだ若くてこれこらである。目を覚ますのは15年後、となると起きた時には29歳である。若い時代に楽しみたいと言うのに、深い眠 りにつきただただ時を待つだけ。人生を棒に振るのと変わらないと思う。わざわざ自分からわかって指を指しにいくなんてのもバカな話であるし、そんな塔そもそも近づかずに1日を過ごせば関係ない。私も昔はそう思っていた。 だが、そうもいかないらしい。これは母である先代茨姫の話。母には夢があり、それをする為に茨姫としての職務を放棄しその日は塔にはいかず何処かへ逃げて様子を見る予定だった。 しかし、不思議な事に日が落ちる頃には体が勝手に動きだして自然と塔へ足が向かってしまう、そして触りたくもない糸車に手が伸びてしまい指を刺してしまうという。結局のところ抗う事は出来ないのだ、私は。大人しく、運命の通りに進むのが妥当なのである。無理に抗っても無駄な事、きっと私が嫌がる事をわかって事前に聞かされていたのだ、小さい頃からずっと・・・。
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