*第三話*

2/9
前へ
/70ページ
次へ
夕日が綺麗に輝く頃、気づけば私は塔の前に1人立っていた。 いよいよ、この時が来たのだ。 内心では行きたく無いと思うものの、身体は勝手に塔の中へと進んでいく。いつも外から見ていた高い高い塔。石積みで出来た塔はひどく古ぼけていて所々にヒビがみえる。 目の前にある重い鉄の扉についている丈夫そうな錠前と鎖。簡単に壊す事は出来無いだろう。しかし、私はなぜかその錠前の鍵を持っている。どうして持っているのか、私にもわからない。その鍵を錠前の鍵穴にさし左に回す。 『カチャッ』という小さな音と共に錠前と鎖が崩れ落ちるように地面に落ちた。それを確認し、開けた時につかった鍵をポケットに入れる。重い鉄の扉を押し開け中に入ると石で出来た階段があった。上へ上へと続く長い螺旋階段。ドレスの裾を持ち上げ、一歩、また一歩と登って行く。 度々ある窓から外の様子を見る。一つ段を登る度遠ざかる地面、城、そして私の日常。今ここに居られる事を噛み締めながら、また一段一段登っていく。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加