2人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい、なんでしょう?」
(なにがなんでしょうだ。我ながら白々しい)
「糸を紡いだ事はあるかね?ここらじゃ14年前辺りに糸車の焼き払い条例が出ていたからね。全て焼き払われてしまった。これはそれの唯一の生き残りじゃよ」
「そうだったんですか。父から焼き払い条例の話は聞いていましたが、残っていたのですね。初めて目にしましたがこんなすごいものがあるなんて・・・」
(なんてわざとらしい言葉。別の事を言おうとしても口が勝手に動いてしまう。これも運命のひとつなのかね…)
「気に入ってもらえたかね。どうだい?1度やってみるのは」
「いいんですか?それじゃあ、少しだけ・・・」
(やりたくない。こんなもの)
そんな私の気持ちとは裏腹に、身体は糸車に吸い寄せられる。
「ここをこうしてだね…ゆっくりでいいんだ、やってみなさい」
魔女の教えなんて何も頭に入ってない。どうせ身体が勝手に動くのだし、指をさすのだ。聞いていても仕方ないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!