*第三話*

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「ここは・・・どこ?」 ふと、目を覚ましたそこは花畑が綺麗な何処かの草原だった。 大木の下で居眠りでもしていたのだろうか、手には開いた状態で落ちている分厚い茶色の本。 「あれ、私なんでこんな所に?だって、私は確か・・・」 そこで、彼女は気がついた。 自分が何者なのか、なぜここにいるのか、ここが何処なのか、何もわからない事を、知らない事を、覚えていないことを。 記憶の混乱に困惑していた所を黄色いシャツに赤いベストを来たウサギが横切った。 「ウサギ・・・」 頭の中を何かがよぎった。 (私はあれを追いかけなければいけない、そんな気がする) なぜかはわからない、本能のまま。気がついた時にはウサギを追いかけ走っていた。 花畑の中を抜け、小さな穴の中に入っていくウサギ。四つん這いになりながら、服が汚れるのも気にせずに追いかけていく。 「待って、行かないで!貴方に聞きたい事があるの!」 聞こえていないのか、ウサギはどんどん進んでいき、見えなくなってしまった。 それでも追いかける事をやめない。このまま進まなくてはいけないと思ったからだ。 そして、落ちていった。 深い深い穴の底へと・・・。
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