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その後、寮に向うエスカレーター組を捕まえて俺と竜は無事寮にたどり着いた。
寮の外見はパンフレットを見たので知ってはいたが、実物は迫力が違う。
大正ロマンな雰囲気のレトロながらも素敵過ぎるデザイン。
まるで城だ。
中に入ると大きなエントランスホールがあり、その向こうに更に大きなスペースの、共同空間があった。立派な椅子やテーブルが並べられ、まるでホテルだ。
この寮は1年から3年まで全ての生徒が住んでおり、1年と2年が相部屋。3年が個室を貰える仕様となっているらしい。
俺は取り敢えず竜と分かれ、自室へと向かった。
部屋には共同のリビングと、鍵付きの個室がある。個室にはそれぞれシャワールームつき、という贅沢さだ。
風呂は大浴場のみたが。
同室になる予定の先輩はまだ授業中である。
今のうちに俺は共同スペースから自室に荷物を運び、片付けに取り掛かった。
まぁ、ベットもクローゼットも机も本棚も、全て造りつけになっているので、ひたすらダンボールの中身を移して行く単純作業だ。
あらかた部屋が片付いた所で、部屋のドアが空く音がした。
共同スペースに顔を出すと、同室者と思われる人が立っていた。
「あ、はじめまして。1年D組の藤堂 律です。今日からよろしくお願いします」
同室者なら必然的に、2年生だと思われるので、俺は丁寧に挨拶をした。
「おう!俺は2年A組の水嶋 朋(みずしま とも)だ。生徒会書記。よろしくな」
友好的に差し出された手と握手を交わし、俺は固まった。
生徒会…だと…!?
いや、確かに顔は可愛い方だし、身長も俺より低め。立派な受け顔。黒髪黒目で日本人らしい。
が、何と言うか、普通、過ぎる。
可愛いけど、特徴がない。
モブにはならなさそうだが、敢えてあげれる特徴がない顔。
そんな彼が、生徒会…。
「ぅおーい。どしたー?」
握手したまま固まり続けていた俺をの目の前に手をひらひらさせながら覗き込む水嶋先輩。
「あ!すみません。生徒会と聞いて驚いてしまって…。生徒会の方はてっきり個室かと」
慌てて握っていた手を離し、とっさの言い訳をする。
まさか特徴がなさ過ぎて驚いた何て、死んでも言えまい。
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