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「あー、別にヤンキーではないので、警戒しないでくれると嬉しいです。ただ、趣味で着てるだけなんで」
正確には、”元”ヤンキーだ。
俺が二次元にハマった時、俺はグループを抜けた。
直接番長に「他に生きたい世界が見つかったので、足抜けさせてください」とリンチ覚悟で言った。しかし番長は俺の頭をぽんと撫で「わかった。ならその世界で生きろ。自分で選んだ世界だ。後悔しないようにしっかりと足踏みしめて生きろよ」と言って、にやりと男前な笑みをみせてくれた。
元々番長に憧れて入ったグループだったのだが、この言葉で俺は益々番長を好きになった。
なので、足抜けした今でも、番長とは個人的に連絡を取り合っている。
あの時の番長は本当に格好良かった。今思い出しても惚れ惚れする。
「あーっと、見た目で判断して悪かったな。俺は3年の都(みやこ) 綜其。名前で呼んで良いぜ」
綜其先輩はさっきとは打って変わって、人懐こそうな笑みを見せた。
既に心の中では名前呼びでした、とは言わず、俺は普通に挨拶した。
「藤堂 律です。俺も律で構いません。よろしくお願いします」
そう言いながら、俺は綜其先輩を観察した。180cmは軽く超えてそうな身長。左わけで、短く切った髪は自然に立ち、活発な印象を与える。そしてイケメン。
うん。ナイスカップリングだと思うぞ、竜。
そう思っていると、竜が俺のことを申し訳なさそうな目で見てきた。
「律、格好くらいで驚いてごめんな。お前が好きで着てるなら、俺はもう何も言わねぇから!」
そう言いながら、竜は照れたように笑った。その顔は綜其先輩に向けてくれ。
というか、同室者はどうしたんだろう。
綜其先輩は3年と言っていたので、違うとおもうのだが…。
まさかっ竜と同室になりたいが為に権力を行使して3年でありながら相部屋にしたとか!?
「竜、あのさ、同室者って…」
「ん?自室に居るぜ」
ガッデム!!
俺の妄想違いとは!
綜其先輩の甲斐性無し!!
悔しげに拳を握る俺に気づかず、綜其先輩が部屋の中のドアに向かって声をかけた。
「おーい、出てこいよ、鳳(ほう)!竜が話してたダチが来たぜー」
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