最後まで

2/2
前へ
/80ページ
次へ
心臓が舌で舐められながら、ゆっくりと持ち上がるような。 そんな感覚に襲われた。 なんでかな、鎖骨から脳天までが熱くて仕方がない。 右向け右なんて言われもせず、自然と運ぶ足取り。 4つの足がバラバラに動きながら、同じ方向を行く。 このまま溶けてしまえば良いのに。 今日はなんだか、そういう気分でして。 ずんぐりむっくりな醜女と、見目麗しい美女が、互いの半径1m以内を歩いてる光景が、左にあるガラスに映った。 そのとき、心臓からゆっくりとポタポタと、血がフワリと溢れるような。 それが横隔膜の上で溜まって踊る、そんな感覚があった。 一つ一つ発される言葉に意味がこもってて、決して空白なんかじゃないものがそこにはあった。 それは、美女をどう思わせたのだろうか。 不安で仕方がない。 けれども、ここで立ち止まってるわけにも行かずと、押し殺される声が悲鳴をあげるようだった。 横隔膜を上から抑えられるような。 また声は、ポタポタと流れる。 あの子が笑えば、全世界の天気がその土地に合った気候に変わってくれる。 それだって、ずっと信じてた。 それと同じか解らないけどね、その美女が笑えば、怒りに似ても似つかない感情が込み上げてきて、笑顔にしてくれるの。 これからも、最後まで笑っててほしい。 泣くなら、私の前で泣いてほしい。 また一つ、想いが募った。 「あなたを愛してる」、言葉にできるまで、時間をください。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加