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「丘の上のあの樹木の元、僕は君に接吻をした。柔らかなその唇に」
…父を男として意識したのは、この一文を若き頃に書いたであろう父の日記に見た時だった。
当時の私はまだ小学3年生か4年生で、千葉県の郊外、駅から徒歩10分。畑が目の前に広がる借家住まいをしていた時。
松が家の脇に、何とも言えぬ良い香りのクチナシの白い花が咲く庭先に。
それに続く学校の校庭ほどの広さのある畑が雪で覆われるとそこは私達兄弟のパラダイスになる、そんな場所が私達の生活場所だった頃…
父は『鬼』であった。
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