第1章

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しかし、今度は私の弟が「俺見た事ないから持っていていいか?」と聞いてきたので渡した。 藤川の名前継ぐ次男、ま、渡しておくのが筋かなと、渡した。私は嫁に出た身だし。 兄?それはのちのち。 父は長男だったが、元々長男だった訳では無い。 証拠に、戸籍記載は「二男」。 そう、兄が亡くなり、姉が生まれ…そして父が生まれた。 だから、親はとびきり喜んだ。 期待した。父は親の期待を一身に受け、尚更頑張った。 弟である叔父は 「僕なんて、ミソッカスだったからね。」 と、当時を振り返る。 が、しかし…この人ほど多才な人を私は知らない。 千葉の家には、お琴、三味線があった。誰の?と、聞いたら「茂叔父さんのよ」と母は答えた。 何故うちに置いてあるのか迄は聞かなかったが、短かに置かれた琴の爪や三味線を見ると、自分の現実とはとても離れた遠い世界が浮かんだ。
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