302人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
□□□
カサカサと木々が揺れ、空が陰る。黒い雲に覆われた空からポツポツと雨が降り出し、広大な大地を濡らした。
それでも抱き合っている二人を、木陰から鋭い眼差しが捕らえた…。
まるで獲物を狙う獣のように。茶色い髪が風に靡いている。
「随分捜したぜ。俺から逃げれると思うなよ」
男は手にしていた煙草を一服すると、中指で二つに折り足下に投げ捨てた。
まだ煙のたち上がる煙草が雨に打たれ、悲鳴のごとくジュッと音を鳴らした。
男は執念深くその煙草を右足で捻り潰す。
まるで…
二人の幸せを絶ち切るように。
男は口角を引き上げ、不敵な笑みを浮かべた。
歪んだ愛の矛先にいたのは…。
「奈穂子は俺のオンナだ。お前には渡さねぇよ」
木の枝で、どす黒い蜘蛛が…
新たな糸を放った。
~The end~
最初のコメントを投稿しよう!