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刹那まで、涙に濡れていたかの如く潤んだ瞳は、獣のように鋭く朱莉を射抜いた。
しかし、不思議と不快感を与えるものではなかった。
むしろ、抗い難い魅力を秘め、朱莉を捕らえて離さなかった。
朱莉の発した声は、彼には届きはしなかったが、口の動きで内容は伝わってしまったらしい。
一瞬動きを止め、少年は怒ったような、困ったような、複雑な表情を浮かべた。
そして一度頭を軽く掻くと、迷いを振り払うかのように立ち上がった。
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