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prologue 朱莉《あかり》
〜〜〜〜〜あなたには一生忘れられない心象風景が有りますか?〜〜〜〜〜
毒毒しく血のように紅い満月。現実ではあり得ない大きさの其れは、クレーターの一つ一つが肉眼で確認出来るのほどの精密さも兼ね備えていた。そしてコントラストする様な純白の雪結晶。
各々が不規則な軌道で落ちてくる様を真下から覗けば、そのあり様は今立っている大地の感覚さえも失ってしまう程にその幼女を惑わせるのだ。
凍てつき心まで失くしてしまうかと思えるほどの圧倒的な美しさ。幼女の悲しみが魅せる幻想の景色は、果たして何処までが現実なのか判断に迷う。
ただはっきりしてるのは、己が手に握る白い封筒の重みだけ、これは母からの最後通告…。
ダメよ、感じちゃダメ、でないとわたしが壊れちゃう‼︎
自らの心を守るために、彼女は必死で笑顔を演じるのだった。
ああ、今日もまた一日が始まる。朱莉は瞳から流れ落ちる涙を拭ってから、上体を起こした。
なぜ、わたしは毎度泣いているのだろう?永遠に答えの出ない問いを、朱莉は心に投げかけずには居られないのだ。
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