祭りの恋

2/7
前へ
/7ページ
次へ
「友子(ともこ)あなた暇でしょ?明日手伝いなさいよね」 割烹着姿の母は私を見るなりそう言った。 「明日、なんだっけ?」 寝起きの私を一瞥し鬼気迫る雰囲気で、台所に立つ母。 「祭りよ。祭り!」 ああ、明日は三社祭りだったのね。 三社祭り自体は木曜の本社神輿(ほんしゃみこし)へ浅草神社の御神霊(おみたま)をお移しする儀式から始まり、金曜日はお囃子屋台・鳶頭木遣り・びんざさら舞・白鷺(しらさぎ)の舞などが行列をつくって浅草の町を歩く。 土曜日は町内神輿の渡御(とぎょう)があり、日曜日は本社神輿渡御がある。 「面倒くさいな……」 そう、面倒くさいの。 もう子供じゃないし、祭りになんの魅力も感じなくなっている。 そりゃ子供の頃は、神輿を担いだり、縁日で遊んだり、楽しかったよ。 でも社会人を5年も過ごせば、祭り以上に楽しい事を沢山知ってしまっている。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加