第1章 夏の始まり 楓夏

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「これは形容詞を入れれば良いんだよ」 「答え教えてよ!」 後は自分で考えなさい、と麻里の背中を叩いて前をむかせた。 本当は答えの単語が出てこなかったのだけれどなんとか誤魔化せた。楓夏のけち、とかブーブー言いながらも麻里は再び赤本とにらめっこを再開した。 まだ雨がしつこく降って毎日空が薄暗くて昼間から教室の電灯をフル稼働させていた梅雨の時期から、ポツポツと振り始めの雨みたいに教室の中に参考書や赤本を机の上に広げる人が出てきた。 その数は日に日に増えていって七月の中旬になる今日では半分以上の生徒が休み時間でも机に向かって英文や数式と格闘している。 麻里もバスケ部を引退した次の週から人が変わったかのように勉強しだした。
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