第1章 夏の始まり 楓夏

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今では麻里は私にとって絵理と同じくらい欠かせない存在になっている。 それなのに、絵理と麻里は友達という関係ではない。それもそうだ。二人は部活も違うし、クラスだって違う。 三年一組の生徒、吹奏楽部の部長、たまたま私がこの二つの肩書きを持っているから絵理や麻里と友達になれた。 「そうだ、駅前に美味しいケーキ屋さん見つけたんだ。今度一緒に行こうよ」 「本当そういうの詳しいよね麻里って。良いよ、今度放課後にでも行こうね」 麻里はやったー、と満面の笑みを浮かべて喜びながら問題の答え合わせを始めた。 多分絵理とならケーキ屋なんて一緒に行かないだろう。だって絵理は甘い物が苦手だから。麻里とだからケーキ屋に行く。これで良いんだ。 二十四時間ずっと一緒に誰かと過ごすことなんてない、会いたいと思ったら会えば良いし、今はちょっと会いたくないと思ったら距離を置けば良い。友達だって恋人だって、どんな人間関係もそうだと私は考えている。 絵理や麻里も割と近い考えを持っているからみんなそうなんだと今まで思っていた。 だけど……夏樹、私の彼氏は全く正反対の考えを持っていた。 この考え方の違いで私たちカップルは喧嘩をしてしまい未だに仲直りできていない。
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