第1章 夏の始まり 夏樹

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真っ白なボールがバウンドする度に茶色の乾いた砂ほこりが舞っていく。砂ほこりが目に入って一瞬ボールを見失ってしまった。 次にボールを見つけた時には、ボールは俺の横を通過しようとしていた。咄嗟にボールに向かって飛び込む。 ボールは申し訳なさそうにグローブの端をほんの少しだけかすめて、俺にお辞儀をしたかのようにポンポンと地面に跳ねて外野に抜けていってしまった。 「どんまい」 裕也が俺の背中をグローブで軽く叩いてきた。寝転んだままだと邪魔だぞ、という合図だ。 俺は起き上がって次に監督のノックを受ける裕也の後ろに並ぶ。 空を見上げると夕陽はもうほとんど沈んでしまっていて、グラウンドは数年前に取り付けられた照明によって明るさを保っている。
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