第1章 夏の始まり 夏樹

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高校に入学し野球部に入部してからの三年間、ずっと裕也の背中を追いかけてきた。 裕也の身長は俺よりも10cm以上大きいし、50m走のタイムも握力とかの体力テストの結果でも一度も裕也には勝てない。 別に運動が苦手という訳ではない。中学校の野球部では一番ショート、というのが俺の名前の定位置だったし、体育の授業のサッカーやバスケでもその部活のやつらと張り合うことだって出来る。 それなのに裕也にだけは勝てなかった。高校最後の大会、夏の甲子園予選、ショートのポジションのレギュラーに渡される背番号6のユニフォームは当たり前のように裕也の手元に渡っていった。 俺が渡されたユニフォームの背番号は13。 高校野球はプロ野球みたいに55番とか51番の背番号の選手がスターになるような世界ではない。 1から9番の人がレギュラーで10番以降の人は控え。ベンチで応援しながらいつ来るかわからない、もしかしたら一生来ないかもしれない出番を待たなければならない。簡単な世界だ。
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