第1章 夏の始まり 夏樹

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「あちぃー誰かコールドスプレー持ってね?」 汗がしみ込んでいて匂いを嗅がなくても臭いとわかるアンダーシャツを脱ぎ捨て上半身裸の姿で裕也が部室を見渡す。 あるわけないと知っていながらも俺は一応カバンの中を探すふりをする。 「あったぞ。ほらっ」 先に部室に帰ってきて着替えを始めていた雄二がコールドスプレーを投げ渡した。裕也はサンキュー、とボールを受けとるように片手で難なく受けとって自分の身体にふりかけた。 人口も密集している上に、使わないバットやグローブが放置されたままの部室に汗の匂いと制汗剤の匂いが混ざり合って、今すぐにでも飛び出していきたい気持ちになる。 「つーか昨日のテレビ観た?みよりんがドッキリに引っかかるやつ」 制服のカッターシャツのボタンをしめながら雄二が言った。
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