第1章 夏の始まり 夏樹

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毎年テレビで見る光景、夏の甲子園で優勝してマウンドの上で涙をこぼしながら輪になって喜んでいる奴らは、その夏負けていった全国の球児たちの注目を集めながら誰よりも長く野球をしたということになる。 もし、100校以上も高校がある県の公立の進学校の野球部がそんなことになったら絶対に映画やドラマになったりするだろう。 「……だよな?……夏樹?」 「えっ?」 変な声が出てしまった。 途中から雄二の話を全く聞いていなくて何の話題かわからない。 「だぁから!田口さんってみよりんに似ているよな?」 雄二の口調はイライラしている。どうせみんなの同意を得られなくて俺に聞いてきたのだろう。 「田口さんって一組の?まぁ似てるっちゃ似てるかもな」 適当にそう言いながら頭の中で田口さんの顔を思い出しながら、部室の壁に飾られたみよりんのポスターと見比べてみる。 うん、確かに似ているかもしれない。
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