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「あーでも俺、鈴音さんもタイプかもしれん」
全員に袋叩きにあっていた雄二の何気ない一言が俺の胸にチクりと刺さった。
「鈴音さんって誰やっけ?」
田口さんの話題ではワイワイ言っていた他の奴らもいまいち誰だか分かっておらずなんとも言えない雰囲気になる。
俺は何も言葉を発しない。裕也も俺の気持ちを察してくれたのか、着替えに専念して下を向いたままだ。
「ばか!田口さんとよく一緒にいる子だよ。吹奏楽部の部長」
あーあの子かぁ、そう言えばいたな、とちらほら声が上がる。
「田口さんに隠れてるけどあの子もかなり可愛いぞ。性格は大人しそうだけど」
とドヤ顔で雄二は語っていく。
確かに可愛いかも、あんまり男子と話さないよな、と話はどんどん盛り上がっていってしまう。
ちらっと裕也のほうを見ると、こっちを向いてあからさまにニヤついた顔を見せてきた。事情を知っているこいつはどうやらこの状況を楽しんでいるみたいだ。
今すぐにこの場から逃げ出したい、そう思った俺は泥のついたままのユニフォームやスパイクを野球バックに詰め込み立ち上がった。全員が俺に注目してしまう。
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