第1章 夏の始まり 夏樹

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「雄二のやつ、鈴音さんのこと可愛いだってさ」 駐輪場に止めてあった自分の自転車につけていた鍵を外しながらさらっと裕也が言う。 「あぁ、そう言ってたな」 「何?まだ喧嘩してんの?」 意地悪い顔を裕也は浮かべている。わざわざ追いかけてきてまで話したかったのはこのことみたいだ。 「お前に喧嘩してるって言ってないよな……」 「俺には何でも分かるんだよ」 こういうことが今までに何度かあった。裕也にはなんでも隠し事が通用しない。 周りに茶化されたりするのが恥ずかしい、とあいつ、楓夏が言うから付き合っていることは秘密にしようと決めていたのに裕也にはすぐにばれた。 俺は背が高いから何でも見える、と冗談っぽく言うけれど本当にそうなんじゃないかと疑ってしまう。
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