第1章 夏の始まり 楓夏

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「おはよう、部長今日も一番乗りだね」 音楽室の入り口から声がした。振り返らなくても絵理だと分かる。 「もう少しで終わりだからね」 トランペットを机の上に置いて窓から外を覗いてみると、続々と後輩の部員たちが登校してきて校舎の中に入ってきていた。 ここから見える制服姿はみんな吹奏楽部員で他の生徒たちはまだ見当たらない。 「ねえ楓夏、野球部どこまで勝つかな?」 絵理はいつの間にか教室前方にあるグランドピアノの前に座ってポロポロと鍵盤を叩いていた。 私の倍以上は長さのあるサラサラな黒髪が揺れて、私のより少し短いスカートから出たすらっとした足はリズムを取っている。 絵理は何をしても可愛く見える。 私も別に容姿が悪いとは思っていないけれど、絵理と並べてみると敵わない。 「甲子園は無理だろうけど……、県大会ベスト8はいって欲しいかな」 私がそう言うと、わっリアル、と絵理はケラケラ笑った。 音楽室の入り口からは次々と私たちに挨拶をしながら部員たちが入ってき始めた。
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