第2章 涙の理由 楓夏

2/20
前へ
/50ページ
次へ
誰かに掴まれたかのように心臓がぎゅっと痛くなる。 これは別に私がお昼休みの教室で一人ぼっちで時間を過ごしているせいではない。 いつもは麻里や他の友達と一緒にお昼ご飯を食べているけれど今日はそんな気分にはなれなかった。 お母さんには申し訳ないけれど今日はせっかく作ってくれたお弁当も食べられない。 食堂の前にあるこの学校唯一の自販機で買った、抹茶オーレをゆっくり時間をかけて飲んでいく。 今はこれくらいしか喉を通らない。 よく道路の脇に設置されている有名メーカーの自販機でもなく、飲み物は缶やペットボトルはなくて全部紙パックの自販機。 みんなは馬鹿にして毎朝コンビニで飲み物を買ってきているけれど私はこの自販機の飲み物が好きだ。特に抹茶オーレ。苦味と甘味が絶妙なバランスになっている。 だけど今日はちょっぴり苦味の方が多い気がする。 全部飲み干して紙パックを潰す。ぐしゃっ、という音と共に紙パックは小さく丸くなった。教室の隅っこに置かれたゴミ箱に紙パックを投げ入れる。 私の手元にあるこの茶封筒も一緒に投げ捨ててやりたいという気持ちをぐっとこらえて。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加