第2章 涙の理由 楓夏

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お昼休み前の4限目の授業は岡本先生の古典の授業だった。 岡本先生は吹奏楽部の顧問としては、指揮も上手だし悩んでいる部員に対してアドバイスをくれたりしてみんなから良い先生だと思われているけれど、古典の先生としては少なくとも私たち三年一組の生徒からの評価は高くない。 決して教え方が悪く授業がわかりにくい訳ではない。授業終了を告げるチャイムが鳴っても5分間は授業を延長させる、それだけだ。 ただこの5分間が私たちにとっては死活問題になる。 三年一組の時間割表の4限目の欄には‘‘古典’’の文字が2個並んでいる。つまり週に2日、火曜日と金曜日は昼休みが他のどのクラスよりも5分遅く始まるということだ。 この5分間で食堂は満席になってしまうし、パンを買いに行っても売店にはすでに行列が出来てしまっている。
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