第2章 涙の理由 楓夏

6/20
前へ
/50ページ
次へ
この気持ちはわかる。一つ上の学年の教室ってまるで異世界のように感じる物だ。 私も去年は、先輩たちがたった一つしか歳は違わないのにものすごく大きな存在に見えていた。 「部長、急に来てすみません。実はお話があって」 部長、と呼ばれて一気に三年一組鈴音楓夏、から吹奏楽部部長 鈴音楓夏へと気持ちが切り替わる。 心臓がドクンドクンといつもより早く脈打つのが分かった。こんな昼休みにわざわざ教室まで話があるなんて滅多にないことだ。 何か用があってもたいていは朝練や放課後に言ってくるはず。 怖い。 次にゆみちゃんの口が開いて、飛び出してくる言葉を聞きたくない。 「私、部活やめようと思います」 考えていた中で一番聞きたくないセリフが発せられてしまった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加