第2章 涙の理由 楓夏

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「えっと……、理由って話せる?」 動揺しているのを隠して落ちついているふりをして聞いた。 「上手く言えません。なんか気持ちが切れちゃったというか……」 たどたどしく言うけれどゆみちゃんの目は下を向かず、まっすぐに私のことを見つめてくる。 ここで目をそらしては駄目だ。 「何か嫌なことでもあるの?」 頭をフル回転させて、慎重に言葉を選んで、あの言葉を使わないように聞いていく。 「心配しなくて大丈夫ですよ部長。これは私の気持ちの問題なんで。いじめられているとかは絶対にないです」 私が使わなかった言葉をゆみちゃんはあっさりと使ってしまった。 このセリフが嘘ではないことを願いたい。自分の部活でいじめがあったなんて考えたくない。
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