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ざわざわとしたクラスの中で、ミリの頭がこくっと頬杖から滑り落ちる。
「……う?」
その衝撃で目が覚めた。
「あ、やーっと起きたぁ。ちょっとミリー、昼休み中ずっと寝てるってどういうことよー」
「え……あ、ごめん。寝不足で……。昨日、昼寝しちゃったら夜寝れなくなっちゃった……」
伸びをしながらユウコの不平に答え、ぴきりと走る痛みに思わず首を押さえた。
「つっ……!?」
「そんな体勢で寝てたらそりゃ寝違えるっての。ま、今晩はちゃんと寝ることねー」
そう言いながらユウコは自分の席に戻っていく。見ると、ずれた時計が午後の授業開始の10分後を指していた。
ふぁあ、と声を出しながら欠伸を噛み殺したミリは次の授業の準備をしながら、ふと右斜め後ろに視線をやった。
茶縁眼鏡の地味な転入生は、昨日と変わらず仏頂面で教科書を読んでいる。
クラスメイト達はそんな南樫エルの存在を自然に受け入れていた。
触れられることもなく、誰と話すわけでもなく、いつの間にやら空気のように気にならない存在となって南樫エルはそこにいる。
じっと見つめているとまたしても一瞬だけ目が合って、うっとうしそうに逸らされた。
ミリは溜息を吐きながら視線を青くて白い空へと向けた。
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