にじゅうきゅうこめ

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さすがにそれにはちょっと怒って、ユウさんを睨むように見る。 ユウさんは笑って誤魔化す。 「だからできないって。静葵がそうやって睨むから。惚れてるし。浮気しない」 ユウさんはご機嫌をとるように、ちゅっと短いキスを私の顔のいたるところにくれる。 ご機嫌とられちゃう。 小さなケンカもしつつ、いちゃいちゃと過ごしていたら、ユウさんの携帯が鳴った。 ユウさんは携帯を眺めるだけで近くに引き寄せることもなく。 「お仕事じゃないの?」 私は携帯を引き寄せてみる。 画面を見ると唯人さんからのラインだった。 それだけでいちゃいちゃとして気分よくなっていたものが、どこか削がれてしまう。 唯人さんだけど、恵子さんだと思う。 ユウさんに携帯を渡すと予想どおりといった様子。 「なんかもう唯人さんに押しつけたくなってきた…。寿人がいればよかったのにな…」 「唯人さんの弟、イケメンだったの?」 確かモデルやっていたと唯人さんから聞いた。 「唯人さんに似てる。腹違いのはずだけど。…俺があのとき結婚しないで、本当の父親と結婚させておけばよかったのかも。…俺が父親だって思っていたけど」 ユウさんはその送られた文章を読んで、溜め息をついて私に倒れ込んでくる。 「だからなんで俺をダシにしやがるんだよ、あいつはっ」 なんて一人言だけで、またユウさんの話をしているのだとわかる。 恵子さんが本気なら、これだけ唯人さんに毎日のようにメールするくらいなら、ユウさんに直接きてもいいくらいだと確かに思う。 ユウさんは私から起き上がると、気を取り直したかのようにどこかに電話をかける。 …電話、引き寄せなければよかった。 放っておけばよかった。 「すみません。恵子の番号教えてもらえませんか?」 ユウさんは電話が繋がるなり、そんな言葉。 「携帯換えるときに消しましたよ。離婚してから一度も俺に連絡してきたことないんです。だから恵子の新しい番号も知らないんです」 ユウさんはそんな話をしたあと、話しながら番号を携帯にそのまま登録。 …女の名前がユウさんの携帯に増えてしまったもよう。 私が助言ではなく、排除しようとしてもいいだろうか? そんなことを考えてしまう。
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