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さすがにそれにはちょっと怒って、ユウさんを睨むように見る。
ユウさんは笑って誤魔化す。
「だからできないって。静葵がそうやって睨むから。惚れてるし。浮気しない」
ユウさんはご機嫌をとるように、ちゅっと短いキスを私の顔のいたるところにくれる。
ご機嫌とられちゃう。
小さなケンカもしつつ、いちゃいちゃと過ごしていたら、ユウさんの携帯が鳴った。
ユウさんは携帯を眺めるだけで近くに引き寄せることもなく。
「お仕事じゃないの?」
私は携帯を引き寄せてみる。
画面を見ると唯人さんからのラインだった。
それだけでいちゃいちゃとして気分よくなっていたものが、どこか削がれてしまう。
唯人さんだけど、恵子さんだと思う。
ユウさんに携帯を渡すと予想どおりといった様子。
「なんかもう唯人さんに押しつけたくなってきた…。寿人がいればよかったのにな…」
「唯人さんの弟、イケメンだったの?」
確かモデルやっていたと唯人さんから聞いた。
「唯人さんに似てる。腹違いのはずだけど。…俺があのとき結婚しないで、本当の父親と結婚させておけばよかったのかも。…俺が父親だって思っていたけど」
ユウさんはその送られた文章を読んで、溜め息をついて私に倒れ込んでくる。
「だからなんで俺をダシにしやがるんだよ、あいつはっ」
なんて一人言だけで、またユウさんの話をしているのだとわかる。
恵子さんが本気なら、これだけ唯人さんに毎日のようにメールするくらいなら、ユウさんに直接きてもいいくらいだと確かに思う。
ユウさんは私から起き上がると、気を取り直したかのようにどこかに電話をかける。
…電話、引き寄せなければよかった。
放っておけばよかった。
「すみません。恵子の番号教えてもらえませんか?」
ユウさんは電話が繋がるなり、そんな言葉。
「携帯換えるときに消しましたよ。離婚してから一度も俺に連絡してきたことないんです。だから恵子の新しい番号も知らないんです」
ユウさんはそんな話をしたあと、話しながら番号を携帯にそのまま登録。
…女の名前がユウさんの携帯に増えてしまったもよう。
私が助言ではなく、排除しようとしてもいいだろうか?
そんなことを考えてしまう。
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